歯周病が進行するとどうなる?放置するリスクと治療の重要性

予防歯科

「最近、歯茎が腫れやすい」「歯磨きをすると血が出ることがある」

もし、あなたがそう感じているなら、それは歯周病の初期サインかもしれません。

こんにちは、藤沢歯科の院長、雨宮 啓です。当院では、専門性の高い歯科医師、認定歯科衛生士、そして管理栄養士が連携し、皆さまのお口の健康を守るチーム医療を提供しています。特に、歯周病は早期発見と適切な治療が非常に重要です。

今回は、「歯周病が進行するとどうなるのか?放置することの重大なリスク、そして大切な治療の重要性」について、専門的な知識を交えながら、皆さまに分かりやすくお伝えしたいと思います。

歯周病とは?静かに進行する恐ろしい病気

歯周病は、細菌の感染によって歯茎や歯を支える骨などの組織が破壊されていく病気です。初期には自覚症状がほとんどないため、「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」とも呼ばれています。

私たちの口の中には、常に多くの細菌が存在しています。普段は悪さをしないこれらの細菌も、歯磨きなどのケアが不十分だとプラーク(歯垢)という塊の中で増殖し、毒素を放出します。この毒素によって歯茎に炎症が起こり、それが進行することで歯周病へと発展していくのです。

歯周病が進行する (ステージ)

歯周病は、進行度合いによっていくつかの段階に分けられます。

歯肉炎: 歯茎が赤く腫れたり、歯磨き時に出血したりする程度の初期段階です。まだ歯を支える骨には影響が出ていないため、適切なケアで健康な状態に戻すことが可能です。この段階では、丁寧な歯磨きや歯科医院でのクリーニングで改善が見込めます。放置すると次の段階へと進行してしまうため、早期の対応が大切です。

軽度歯周炎: 歯茎の炎症がさらに進み、歯と歯茎の間に歯周ポケットと呼ばれる溝が深くなります(3〜4mm程度)。歯を支える骨もわずかに溶け始めます。この段階では、歯周ポケット内のプラークや歯石を除去する治療が必要になります。適切な治療を行えば、進行を食い止めることができます。

中等度歯周炎: 歯周ポケットがさらに深くなり(4〜6mm程度)、歯を支える骨の破壊も進行します。歯がグラグラしたり、膿が出たりすることがあります。口臭も気になり始めることがあります。この段階では、より専門的な歯周病治療が必要となり、場合によっては歯周外科治療も検討されます。

重度歯周炎: 歯周ポケットがさらに深く(6mm以上)、歯を支える骨が大きく失われ、歯が大きくグラつき、最終的には抜け落ちてしまう可能性が高い状態です。歯茎の腫れや痛みが慢性化し、日常生活にも支障をきたすことがあります。この段階では、抜歯を余儀なくされることも少なくありません。

放置するとどうなる?歯を失うだけではない深刻なリスク

「歯が抜けるくらいでしょ?」

そう思われた方もいるかもしれません。しかし、歯周病を放置することのリスクは、歯を失うことだけにとどまりません。近年、歯周病と全身の様々な病気との関連性が明らかになってきており、その影響は決して軽視できるものではありません。

歯を失う

最も直接的なリスクは、歯を支える骨(歯槽骨)が溶けてしまうことによる歯の喪失です。歯周病菌による炎症が慢性的に続くことで、歯槽骨は徐々に吸収されていきます。一度失ってしまった天然の歯は、二度と元には戻りません。食事の際にしっかりと噛めなくなる、発音が不明瞭になる、顔貌が変化するなど、日常生活に様々な支障をきたし、生活の質を大きく低下させてしまいます。また、失った歯の部分を補うためには、入れ歯やブリッジ、インプラントなどの治療が必要となり、時間や費用もかかります。

口臭の悪化

歯周病が進行すると、歯周ポケットと呼ばれる深い溝の中で、嫌気性菌と呼ばれる酸素を嫌う細菌が大量に繁殖します。これらの細菌は、タンパク質などを分解する際に、硫化水素やメチルメルカプタンといった悪臭成分を産生します。これは、周囲の人に不快感を与えるだけでなく、ご自身の自信を失う原因にもなりかねません。口臭は、人間関係にも影響を与える可能性があり、社会生活を送る上で大きな悩みとなることがあります。

糖尿病のリスクを高める

歯周病菌が血液中に入り込むと、炎症性物質(TNF-αなど)が全身に放出され、インスリンの働きを妨げる可能性があります。インスリンは、血糖値を下げるホルモンであり、その働きが阻害されることで血糖コントロールが悪化し、糖尿病を発症したり、既存の糖尿病を悪化させたりするリスクが高まります。実際に、歯周病が重度な人ほど糖尿病を発症しやすいという疫学的な研究結果も報告されています。また、糖尿病の人は免疫力が低下しているため、歯周病に対する抵抗力が弱く、歯周病が進行しやすいという悪循環も存在します。

心臓病・脳卒中のリスクを高める

歯周病菌や炎症性物質が血管内に入り込み、血管壁に炎症を引き起こしたり、血栓(血の塊)を作りやすくしたりする可能性があります。これにより、動脈硬化が進行し、血管が狭くなったり詰まったりすることで、心筋梗塞や狭心症といった虚血性心疾患や、脳梗塞や脳出血といった脳卒中といった命に関わる病気のリスクを高めることが示唆されています。口腔内の慢性的な炎症が、全身の血管系の疾患に影響を与える可能性があることは、近年多くの研究で指摘されています。

誤嚥性肺炎のリスクを高める

高齢者や嚥下機能(食べ物を飲み込む機能)が低下している方は、歯周病菌が唾液とともに気管に入り込み、肺で炎症を引き起こす誤嚥性肺炎を発症するリスクが高まります。誤嚥性肺炎は、重篤な合併症に繋がることもあり、特に高齢者にとっては命取りとなることもあります。口腔ケアをしっかりと行うことは、誤嚥性肺炎の予防においても非常に重要です。

妊娠への影響

妊娠中の女性が歯周病に罹患している場合、歯周病菌が産生する炎症性物質(プロスタグランジンE2など)が、子宮の収縮を促し、早産や低体重児出産のリスクを高めるという報告があります。妊娠中はホルモンバランスが大きく変化するため、歯周病が進行しやすい状態にあります。妊娠を希望される女性や妊娠中の女性は、より一層口腔ケアに気を配り、歯科医院での定期的な検診を受けることが大切です。

その他の全身疾患との関連性

近年、歯周病は、関節リウマチ、腎臓病、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、がんなど、様々な全身疾患との関連性が研究されています。これらの病気との直接的な因果関係はまだ完全に解明されていませんが、口腔内の慢性的な炎症が全身の免疫システムや炎症反応に影響を与える可能性が示唆されています。お口の健康は、全身の健康と深く繋がっているのです。

なぜ放置してしまうのか?歯周病の落とし穴

初期の歯周病は自覚症状が少ないため、多くの方が「痛くないから大丈夫」「少し歯茎が腫れているだけだろう」と放置してしまいがちです。しかし、症状が現れたときには、すでに病状がかなり進行していることが多いのです。歯茎の腫れや出血も、一時的なものだと捉えてしまい、見過ごしてしまうことも少なくありません。

また、「歯医者は怖い」「治療が痛そう」といったネガティブなイメージから、歯科医院への受診をためらってしまう方もいらっしゃるかもしれません。忙しい毎日の中で、歯科医院に行く時間がないと感じている方もいるでしょう。しかし、放置すればするほど治療は複雑になり、時間も費用もかかってしまうことを理解しておく必要があります。

大切なのは早期発見と適切な治療

歯周病の治療は、早期であればあるほど、歯や歯周組織へのダメージを最小限に抑え、健康な状態を取り戻せる可能性が高くなります。初期の歯肉炎の段階であれば、丁寧な歯磨きと歯科医院でのクリーニングで改善することがほとんどです。

当院では、患者さま一人ひとりの状態に合わせた丁寧な検査を行い、適切な治療計画をご提案いたします。

当院の歯周病治療の特徴

  • 精密な検査: 歯周ポケットの深さ、出血の有無、歯の動揺度、プラークや歯石の付着状況、レントゲン検査、必要に応じてCT検査など、詳細な検査を行い、正確な診断を行います。患者さまのお口の状態をしっかりと把握することが、適切な治療の第一歩です。
  • 徹底的なプラークコントロール: 歯科衛生士による専門的なクリーニング(PMTC:Professional Mechanical Tooth Cleaning)で、ご自身では落としきれない歯石やバイオフィルムを徹底的に除去します。また、患者さま一人ひとりの歯並びや歯周組織の状態に合わせた、効果的な歯磨きの方法や、デンタルフロス、歯間ブラシなどの補助器具の使用方法について丁寧に指導いたします。
  • 歯周外科治療: 中等度から重度の歯周病に対しては、歯周ポケットを浅くしたり、失われた歯周組織の再生を促したりする外科的な治療も行います。フラップ手術、歯周組織再生療法(GTR法、エムドゲイン法など)、骨移植など、様々な外科的処置に対応しています。
  • 全身の健康を考慮した治療: 全身疾患(糖尿病、高血圧、心臓病など)をお持ちの方や、妊娠中の方など、それぞれの状態に合わせた安全な治療を提供します。内科医や産婦人科医との連携も密に行い、患者さまにとって最適な治療法を選択します。
  • チーム医療: 専門性の高い歯科医師、認定歯科衛生士、管理栄養士が連携し、患者さまのお口の健康だけでなく、全身の健康も考慮した多角的なアプローチでサポートします。管理栄養士による食生活の指導は、歯周病の予防や治療の効果を高める上で非常に重要です。

治療への不安を軽減するために

当院では、患者さまが安心して治療を受けていただけるよう、以下の点に力を入れています。

  • 丁寧な説明: 治療内容、期間、費用について、レントゲン写真や口腔内カメラの画像などを用いて、分かりやすく丁寧にご説明いたします。患者さまが納得した上で治療を進めることを大切にしています。
  • 痛みに配慮した治療: 麻酔の使用はもちろん、表面麻酔や電動麻酔器などを使用し、痛みを最小限に抑えた治療を心がけています。患者さまの不安な気持ちに寄り添い、できる限りリラックスして治療を受けていただけるよう努めています。
  • リラックスできる空間: 落ち着いた雰囲気の診療室、プライバシーに配慮した個室の診療スペースなど、患者さまがリラックスして治療を受けられるような環境づくりに努めています。

予防こそが最大の治療

歯周病は、一度進行してしまうと完全に元の状態に戻すことは難しい病気です。だからこそ、日々の予防が非常に重要になります。毎日の適切なケアと、歯科医院での定期的なメンテナンスを継続することで、歯周病の発症と進行を効果的に防ぐことができます。

ご自宅でできる予防

  • 正しい歯磨き: 歯科衛生士の指導のもと、自分に合った歯ブラシや歯磨き粉を選び、歯の表面だけでなく、歯と歯茎の境目、奥歯の溝などを丁寧に磨きましょう。力を入れすぎず、優しく丁寧に磨くことが大切です。
  • デンタルフロスや歯間ブラシの使用: 歯ブラシだけでは届きにくい歯と歯の間や、歯周ポケットの入り口の汚れをしっかり除去しましょう。歯間ブラシは、歯と歯の隙間の大きさに合ったものを選ぶことが重要です。
  • バランスの取れた食事: 砂糖を多く含む食品や、粘着性の高い食品は控えめにしましょう。これらの食品は、プラークの形成を促進し、歯周病のリスクを高めます。食物繊維を多く含む食品や、カルシウム、ビタミンCなどを積極的に摂取することも大切です。
  • 禁煙: 喫煙は、歯周病を悪化させる最大の要因の一つです。タバコに含まれる有害物質は、歯茎の血行を悪くし、免疫力を低下させ、歯周病の進行を加速させます。禁煙を強くお勧めします。
  • 十分な睡眠とストレス管理: 免疫力を維持するために、質の高い睡眠を確保し、適度な運動を取り入れ、ストレスを溜め込まないように心がけましょう。心身の健康は、お口の健康にも繋がっています。

歯科医院での定期的なケア

ご自宅でのケアに加えて、歯科医院での定期的なメンテナンスが非常に重要です。

  • プロによるクリーニング: ご自身では落としきれない歯石やバイオフィルムを、専門の器具を使って徹底的に除去します。歯石は、細菌の温床となり、歯周病を進行させる原因となります。
  • 歯周病のチェック: 定期的な検査(歯周ポケットの深さ測定、出血の有無の確認、歯の動揺度のチェックなど)で、歯周病の早期発見・早期治療に繋げます。早期に異常を発見できれば、より簡単な治療で済む可能性が高くなります。
  • 予防指導: 患者さま一人ひとりの口腔内の状態や生活習慣に合わせて、効果的な予防方法やケアグッズの選び方などを指導します。

今こそ、お口の健康を見直しましょう

歯周病は、放置すれば大切な歯を失うだけでなく、全身の健康にも悪影響を及ぼす可能性がある恐ろしい病気です。しかし、早期に発見し、適切な治療と予防を行うことで、その進行を食い止め、健康な生活を送ることができます。

「もしかして歯周病かも?」と感じたら、決して放置せずに、勇気を出して藤沢歯科にご相談ください。私たち専門家チームが、あなたの不安に寄り添い、お口の健康を取り戻すためのサポートを全力でさせていただきます。

皆さまの笑顔あふれる毎日を、私たちは心から願っています。

藤沢歯科

院長 雨宮 啓

〒251-0055 神奈川県藤沢市南藤沢21-6-4F

TEL: 0466-26-8541

ホームページ: https://fdic.jp/

執筆者:院長
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・博士(歯学)
・日本歯科麻酔学会認定医
・日本臨床歯周病学会認定医・指導医
・日本口腔インプラント学会専門医
・日本歯周病学会歯周病専門医
・CDAC代表

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