親知らずとは
『親知らず』は前から数えて8番目の歯で、10代後半から20代前半に生えてきます。多くの場合では18歳頃に生えてきますが、親が知らないうちに生えるという意味から親知らずと呼ばれ、お口の中の最も奥に生える歯です。
親知らずが生えてくると、痛みを訴える方や歯が押される感じ、違和感を覚えることがあります。
6歳から12歳頃にかけて、子どもの歯から大人の歯への生え変わるのですが、代生歯(子どもの歯と入れ替わりで生える歯)と新生歯(新たに奥に生えてくる歯)があり、新生歯には次の3つの歯の種類があります。
①第一大臼歯(6歳頃生える)
②第二大臼歯(12歳頃生える)
③第三大臼歯(18歳頃生える)
このうち「③第三大臼歯(18歳頃生える)」は『親知らず』と呼ばれます。
- Q:『親知らず』はみんなにあるものですか?
- A:上下左右すべてに生えている人もいますし、生えてこない人もいます。
現代では食生活や生活環境の変化によって歯の本数自体が減少傾向にあると言われています。上下左右に4本生えている方もいらっしゃいますし、部分的に生えている方もいらっしゃいます。また親知らずの生え方もまっすぐに生えている方もいれば、横を向いて生えている方もいらっしゃいます。また一見生えていないように思えても顎の骨の中に埋まって隠れているケースも多くあります。まずはレントゲン写真でご自身の親知らずがどのような状態なのか確認することが大切です。
- Q:『親知らず』はそのままにしても良いですか?
- A:『親知らず』はそのまま保存しておいた方がよい場合と、抜いた方が良い場合があります。
保存しておいたほうが良い親知らず
1.噛み合わせに関係している場合
2.歯磨き出来て、虫歯の存在や歯肉が安定している場合
3.将来の移植歯として活用できる場合
このような場合には他の歯と同様に親知らずを良い状態に保ってメンテナンスしていきます。しかしながら多くの日本人の親知らずはこのように生えることが少なくて、骨格形態の関係で顎が小さく親知らずが生えるスペースが無いことが多いのが現状です。横を向いてはいてきたり、隣の歯に虫歯や歯周病の原因となってしまう親知らずは抜歯したほうがよいことが多いです。
抜歯したほうが良い親知らず
・完全に埋まった状態(完全埋伏智歯)
・横向きに寝転がった状態(水平埋伏智歯)
・中途半端に生えた状態(智歯周囲炎)
このような状態の親知らずは隣の歯のむし歯や歯周病の原因となったり、歯並びをがたがたにしてしまうことや顎関節の痛みや違和感に関係してしまうこともあるため、抜歯を検討したほうが良いかもしれません。
親知らずの症状
親知らずに関する自覚症状として
1.奥歯の腫れや痛み
2.奥歯の歯ぐきから歯が生えてきた気がする
3.前歯の歯並びに段差がでてきた
4.口を開けずらい
5.肩がこる・頭痛が気になる
これらの症状が1年に数回であったり、持続的に感じるようになったりします。
奥歯の腫れや痛みの原因は智歯周囲炎が考えられます
親知らずが部分的に埋まっていたり、部分的に頭を出している。あるいは横を向いて生えていると、親知らず周囲の歯ぐきに歯ブラシが届かないなどの理由から、プラークが停滞しやすい環境になってしまいます。親知らずの周りの歯周ポケットが細菌感染の温床となることや、お体の免疫力の低下が重なると、細菌が増殖・活性して、智歯周囲炎といって、歯肉の腫れや痛みの症状が出てくるようになります。
奥歯の歯ぐきから歯が生えてきた気がする
親知らずは18歳頃に歯肉から萌出してきます。また30歳代や40歳代になってから、少しずつ出てくることがあります。
親知らずの咬む部分がすべて歯ぐきから出ていればよいのですが、半分歯ぐきに埋まっていたり、半分出て(萌出)していたりすると、歯と歯肉の間に細菌や食事の食べかすなどプラークがたまってしまい、歯周病の引き金になってしまうことがあります。これを智歯周囲炎と呼びます。最初は気にならないかもしれませんが、長期に放っておくと、歯肉の炎症だけでなく痛みを感じる回数が増えたり、腫れる原因となります。また、横を向いて生えている親知らずが原因で、隣の歯のむし歯の原因となることや歯周病を引き起こすこと、歯並びが悪くなることもあるので、レントゲンを撮影して、専門医である口腔外科医による診査・診断を受けることをお薦めします。
前歯の歯並びに段差がでてきた
親知らずの萌出とともに、手前の奥歯が前に押されてきます。そうすると歯列全体への影響から、歯並びが変わってしまったり、特に下の前歯がデコボコになってしまったりします。歯並びに段差が出てきたり、ガタガタになってきたように感じたら、親知らずの抜歯を検討しても良いかもしれません。親知らずが原因で全体の歯並びに影響を与える可能性が強い時は、歯並びに影響が出る前に抜歯することをお薦めすることがあります。まずはレントゲンを撮影しご自身の親知らずの状態を確認することが大切です。
親知らずを抜いた方がよいか・保存したほうが良いのか
出来れば親知らずを抜きたくない・・・これが患者さんの本音だと思います。私たちは『抜く必要のない歯』や『抜歯に伴うリスクが高い親知らず』は保存することをお薦めします。しかし一方で、大切な歯の虫歯や歯周病の原因となる場合や智歯周囲炎、歯並びへの影響を及ぼす場合は、先送りにしないで、早めに親知らずを抜歯することが大切です。あらゆる親知らずの対応経験を持つ口腔外科の専門医と歯科麻酔の専門医による的確な診査・診断を受けていただきたく思います。
保存したほうが良い親知らず
・噛み合わせに関係している
・歯磨きがしっかりと出来る
・自覚症状が無い
抜歯に伴うリスクが高い親知らず
・抜歯の難易度が高く、合併症リスクが高い
※合併症とは手術をすることで起きる可能性があるリスク
しかし、実際には多くの親知らずが『抜いたほうが良い親知らず』に当てはまります。
『抜いたほうが良い親知らず』の5つのポイントをセルフチェックしてみてください。
『抜いたほうが良い親知らず』5つのポイント
- 痛みや腫れといった自覚症状が出たことがある
- お口の中に歯の一部が見えている
- 歯磨きが難しいと感じている
- 噛み合わせの役には立っていなそう
- 歯医者さんで『いつかは親知らずを抜いた方が良い』と言われたことがある
特に今までの歯科クリニックで『いつかは親知らずを抜いた方が良い』と言われた経験はあるのではないでしょうか。親知らずの抜歯は専門性が高く、かかりつけ歯科では対応が難しいこともあります。口腔外科を専門とする専門医による総合的な判断が重要ですので、親知らずの対応経験を持つエキスパートによる根拠に基づいた正確な診断を受けられることをおすすめします。
当院の『親知らずの抜歯』の特徴
①難しい親知らずの抜歯に対応
当院では、大学病院や総合病院で「難しい親知らず抜歯」の豊富な経験を有する専門歯科医師である日本口腔外科学会認定医の『口腔外科処置のエキスパート』が親知らずの抜歯を行います。
②痛くなく、眠っているうちに抜歯を行えます
『痛くない』、『怖くない』そんなリラックスした環境で抜歯を行います。院長をはじめ日本歯科麻酔学会認定医・専門医が在籍しておりますので、静脈内鎮静法という点滴の麻酔方法で、眠っているうちに痛みを感じることなく親知らずの抜歯を行えます。特に歯科治療に恐怖心がある、痛みが苦手といった患者さん、一日でまとめて抜歯を終わらせたいといった患者さんには静脈内鎮静法が最適です。
静脈内鎮静法での親知らずの抜歯がおすすめな方
・歯科治療が苦手
・痛みに弱い
・歯科恐怖症
・一日でまとめて抜歯を終わらせたい
・眠っているうちに抜歯してほしい
③歯周病専門医による親知らずに関わる歯周病治療
親知らずが原因で智歯周囲炎(親知らずの歯周病)をきたすと、親知らずの周りの天然歯に歯周病を引き起こしてしまうことがあります。歯周病の細菌が繁殖して顎の骨が溶けてしまうため、親知らずの抜いた後も手前の歯が歯周病で歯が揺れてくることや膿んでしまうことがあります。日本歯周病学会専門医と日本口腔外科学会認定医によるチーム医療でお口の中の歯周病治療を一緒に行って、自分の歯を長持ちする歯周病治療に取り組みます。
④親知らず抜歯後の矯正治療に対応
親知らずが原因で歯並びが悪くなってしまうことや、下の前歯に叢生(歯並びがガタガタになる)を引き起こしてしまうことがあります。親知らずの抜歯と残存する口腔機能を良好に維持していくためにマウスピース矯正や従来型の矯正治療で歯並びや噛み合わせの改善をすることができます。
⑤管理栄養士による栄養サポート
親知らずの抜歯を行うと腫れることや痛みが出ることがあります。親知らずの抜歯を行った当日に食事はできるのかな。何を食べればよいのかなど、不安はつきものです。そんな皆様の術後の経過に応じた栄養管理を藤沢歯科に所属する管理栄養士がサポートしております。
親知らずの抜歯の流れ